2011年5月20日金曜日

キノコ栽培に挑戦している

当ファームでは、いまキノコ栽培を試行している。
挑戦しているのはシイタケとキクラゲである。

裏山の整備を行うに伴い、キノコ原木栽培に適した手頃な太さの広葉樹材木を大量に伐採した。
この冬、昨年12月から1月のことである。

降った雪がまだ残る整備途中の裏山(2011/1)
長い間手を入れていないため、適度な太さのクヌギやコナラがある
 紅葉が終わり芽吹く前までの、いわば木が休眠している時期に伐採し、枝を付けたまま、そのまましばらく乾燥させた。
2月に入り、これらの木の枝を落とし、原木としての長さに切り揃え(この作業を玉切りと呼ぶ)、電動ドリルで穴をあけ、菌(種駒という)を植えた。

電動ドリルの刃は、椎茸の駒種用のものが売られている
一つ一つの穴開けは楽ではあるが、さすがに大量・長時間作業すると手が痛い

シイタケの菌が付いた駒種
駒種は円錐の先を切った形の木で出来ている
菌を蔓延させているためため、しっとりとした菌で真っ白である

これはキクラゲの駒種
駒種の形・大きさは同じであるが、シイタケと違って白い菌が付いていない
ややベトベトしている感じである
トンカチで穴に打ち込む
今回は、ノウハウの習得を目的としたため、栽培も容易であるというシイタケの『森290号』なる品種 と、キクラゲの『アラゲキクラゲ』の2種を選んだ。

その後は5月中旬まで、シイタケ菌を活着させるための『仮伏せ』作業を行った。
種駒を打ち込んだ木を横積みにし藁をかぶせ、散水してブルーシートで覆い菌の定着を進めさせる作業である。
仮伏せ作業
横積みにしたホダ木に藁を被せ、たっぷり水を撒く
ブルーシートで覆って3ヶ月ほど置く

4月中旬のシイタケのホダ木の様子
白く菌がいい感じで広がってきている
平均気温が上がってきた先日、この仮伏せの原木(ホダ木と呼ぶ)を、『本伏せ』する作業を行った。仮伏せで活着させた菌を、ホダ木の中に蔓延させる段階である。シート内に寝かせていたホダ木を外に出し、立てて並べる。

裏山にある杉林の仄暗い場所に置くのが理想ではあろうが、敷地横に専用のシイタケハウスを作って並べてみた。
W2m×D4m×H2mのパイプ小屋で、約100本のホダ木を並べられる。
雨水が入り、風通しよく、日光が遮られるように、周囲には遮光ネットとヨシズを廻らせた。

シイタケ小屋内部

シイタケは、(上手くいけば)来年の秋ころに発生開始する予定である。
キクラゲは、(上手くいけば)早ければ今年の7月から発生するようだ。
アラゲキクラゲのホダ木
シイタケとは違って、木の切断面周囲に瘤のような盛り上がりが出来ている
菌が活着して白く広がってきているようだ

シイタケのホダ木
種駒を植えつけた場所から周囲に菌が白い縞模様に広がっている
シイタケ栽培に関するHPなどには、菌を植える原木の含水率は何%程度が良い、などと書いてあるが、そんな計測機材もないため、今回は木を伐採したあと玉切り・駒打ちする時期を2回(3週間後と6週間後)に分けて、テストしている。
原木の種類も、ヤマザクラ・クリ・シイなど可能といわれている樹木を数種用意してみた(・・・ブナやクヌギが最適なのは分かっているが、それらばかりが生えているわけではなく、伐採樹木の有効活用のためである。シイタケ専門業になるつもりはない)。
これらの違いがどれくらい発生量に違いをもたらすか、追跡する予定である。
今年末には、さらに里山整備を進め、原木の本数を増やす計画でいる。

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この5ヶ月余りを振返り、文章と写真にするとたったこれだけのことだが、、それぞれの段階の作業は大変な労働であり、考えながら行ってきた作業である。
木を倒すということのリスク。ナタで枝を打つ作業のコツ。小木と謂えども運び出す木がどれほど重たいか。山道を何度も上り下りするハードさ・・など。
体験してみて初めて得られる知識は多い。
文章を読んで頭で理解してきた知識が、より確実になった瞬間である。
実際の体験で裏打ちされた知識は尊い。

いつも思うことであるが、いまの世の中、クリックしただけで多様な情報を得て、そのことでまるで全体が分かったかのようなつもりになっている(勘違いをしている)人が多すぎるのではないか。
原体験がまったく無いか、あっても希薄であるにもかかわらず、能書きを語る輩である。
薄っぺらい裏付けのない理論を振りかざしているだけのようにさえ思える。
バーチャルな世界が、あたかもリアルなものものと信じ込もうとしている。

たしかに、現代社会においては机上だけでクローズする知的労働は、経済活動の生産価値=価額としては高いかもしれない。
それに対して、どうしても実際に自然を相手する第一次産業、いわゆる農業・林業・漁業はそれ自体の生産価値は相対的には低いといわざるを得ない。
しかしながら、こと今回の東日本大震災のような非常事態が起こって明らかになったように、一番必要なこと・試されることは、どんな環境であっても生きてゆく底力でありノウハウである。
逆境にあっても地に足をつけてしっかりと生き抜く魂である。
他人に文句や愚痴は決して言わない。
農林漁業の、地道ではあるが確かな活動にはそれらにつながるものがある。
人間として大切な根源的な魂、強い精神力が、このような労働の対価として磨かれてゆくのだと思う。

他の業がもつそれぞれの意義も認めつつ、この業に従事するものとして、もっと謙虚でありたいと思う。
何しろ『自然』が相手である。人間などは所詮ちっぽけな存在でしかなく、その恩恵で生かされているだけであるから。
これらの、たかがキノコであるが、不思議な自然の摂理が作り出す。自然しか作り出せない。
科学・化学の力でも、キノコ菌もシイタケも作りだせないのである。

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難しい話はさておき、森の恵みを存分に堪能できる日が早く来て欲しいと切に願っている。
その際には、ぜひとも当ファーム友の会メンバーの方々をお呼びし、シイタケパーティーなどしたいものだ。

正真正銘の日本国内産キクラゲをタップリ入れた豚骨ラーメンなど、食してみたいではないか。
その辺に出回っている中国産乾燥キクラゲなどではない。
採れたてキクラゲのコリコリした食感の虜になるに違いない。

シイタケは、採れたて大振り肉厚のものにピザ用チーズを乗せ炭火で網焼きする。
醤油とマヨネーズをつけて、丸ごと頬張る。大胆に食してみたいではないか。
シイタケの香ばしい匂いが口の中に充満するはずだ。

きっと酒も進むに違いない。
そして会話も弾むに違いない。
誰しも美味いものを食すると笑顔になるものだ。幸せを感じるものだ。

われわれはそんな幸せに直接的に貢献できるこの仕事を誇りに思っている。
自然に感謝しつつ祈りつつ。

酒肴としても最高であろう
(当画像はcookpadより)


8 件のコメント:

  1. きのこ栽培に初挑戦です☆

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  2. 挑戦されているのがシイタケであれば来年の秋まで収穫を待たねばなりませんが、菌を打ち込んでも全ての原木からシイタケが出るとも限りません。キノコは実に気まぐれ。
    そう言う意味では、やはり難しいです。
    でも思い通りにならないのもまた愉しいんです。
    きっとはまります。


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  3. ナメコの種駒を接近した原木の辺材部と樹皮の間にオレンジ色の肉腫が盛り上がってきており、なんなのか?知りたかったところです。

    ナメコなどでしたら、オレンジ色の肉腫は盛り上がってきませんよねw

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  4. ナメコはチャレンジしていないので良く解りませんが、シイタケでは仮伏せ後の原木では切り口あたりにはこのようなコブがしばしば出るようです。
    詳しくは分かりませんが、菌が繁殖している証拠だろうと都合よく考えています。実際にそのあとちゃんと出てくるし、雑菌等ではなさそうですね。

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  5. それでは、念のため、オレンジ色の肉腫が出てきた原木だけ、隔離したうえで様子見したいと思います。

    アラゲキクラゲのオガ菌をこぼしたあたりに置いておいたものなので、そちらの写真のように、肉がモリモリ盛り上がってキクラゲが出てきたらいいなと思っておきますw

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  6. 原木でのキクラゲ栽培は湿度の環境が整わないと難しいようです。
    キノコは出てくるのですがなかなか成長せず、カラカラになってしまいます。乾燥しすぎた原木に生える食べられないキノコ(ヒラタケと言ったような気がします)が出て手に負えなくなります。
    かといっていつもジメジメしている場所では、原木が腐ってダメになります。
    現状、キクラゲはほぼ全滅状態で、あきらめかけてます。
    今年はシイタケ(森290号)のみにしました。

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  7. 写真で拝見するかぎり、樹皮面にも菌糸紋が出てきているので、相当、湿度の高い管理をされているように見受けられましたが、それでも乾燥してしまうんですね!

    色々と勉強になります!

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  8. キクラゲの原木を露地で管理すると乾燥しすぎてダメだったということです。
    そう言う意味でちょっと難しいかなと思います。
    梅雨時など湿度の高い時は良いのですが、ちょっと雨が降らないとカラカラに(カチカチに)なって
    干涸びてしまいます。また雨が降るともとの広がった状態に戻りますが、乾くのが繰り返されるとやはり成長は悪いようです。
    そのうちに乾燥した原木に生える違う種類のキノコがびっしり生えてしまいました。
    シイタケは順調に生えていい具合ですが、アラゲキクラゲの栽培は目下試行錯誤中です。

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